![]()
受信メール 32
過去コラムログ
[件名]
鮒
[本文]
「にごった小川の下流の淀みに鮒が一匹住んでいた。鮒はこの汚れた川が大嫌いだったし、自分にはこんな汚れた川は似あわないと思っていたので、鮒は川の上流を目指すことにした、仲間の鮒は止めたけど、鮒は仲間を馬鹿にしていたのでそんな言葉に耳を貸さなかった。鮒はどんどん川をのぼって行った、やがて鮒は澄んだ水に、青々とした藻が水底になびいている綺麗な浅瀬についた。鮒は満足してそこに住む事にしたけどしばらくして後悔した。ここはあまりに水が冷たすぎてうまく泳げない、それにこんなに浅くて空から丸見えじゃ鳥に食べてくれと言ってるようなもんじゃないか。こんな所だとは思わなかった鮒は今度は海に行こうと思った。海なら鳥にもみつからない、水もきっと温かい。鮒は今度は川をどんどん下っていった、もといた場所を通りすぎ、どんどん川を下っていってやがて鮒は海にでた。鮒はどこまで行っても岩にぶつからない、どこまで潜っても底につかない海の広さを喜んでここに住む事に決めたけど、しばらくしてやっぱり後悔した。海の水は塩からすぎる、喉がかわいて仕方がない。食べるものも口に合わない。そして鮒は考えた、自分に水の中は似あわない、陸にあがればきっと満足するに違いない。鮒は陸に向かって勢いよく泳ぎだし、尾びれで水面をおもいっきり叩いて飛び上がると砂浜の上に着地した。初めて感じる風やまばゆく光る太陽に鮒の心は躍ったけれど、今度はすぐに後悔した。ここは息ができやしない。尾びれでどんなに砂をけってももう戻れそうにない。鮒は干からびながら思った。あぁ初めにいたところが一番ましだった。と。」
この話はうちの好きな詩人、足立雪花という人の鮒という話をものっそ大雑把に書いたものです。はじめて学生の頃これを読んでうちは「結局、世の中、身分相応というものがあるのだな、救いの無い話だなぁ」と思ってたけど、今また読んでみて昔とは違った感想を思ちました。この鮒はきっとどこに行っても満足出来ないんだろうなぁって。正直いって世の中、良いこと、悪いこと、天秤に乗っけてみたら悪いことに傾くと思います。だからと行って悪いことに捕らわれて悲観してしまっていてはただでさえ少ない良いことなんてきっと一生みつからない。うちは喜怒哀楽の喜と怒と楽の感情が未発達なのでこの世を色で例えなさいと言われると灰色ですと答えてしまうけど、この世を灰色に塗りたくってるのは他ならぬ自分自身なんですよね。嫌な事をあげていけばキリがないし、不満が無いと言ったら嘘になるけど、良いことと悪いこと、満足と不満足は多いほうが勝ちじゃない。不満だらけだからって、少しの満足まで不満で埋めちゃったらそれこそ灰色しか残らない。あの鮒みたいに干からびてしまう。もし少しの満足で不満を埋める事が出来たのなら、淀みの中で仲間を作り、川を登ってその美しさを満喫し、海の広さに感動して、いつか水をでて、野を駆ける事も出来たかも知れない。
TVで過酷な環境に住むブッシュマンにレポーターがこんな問いかけをした。
「どうしてこんな所に住み続けるのですか?」ブッシュマンは答えた
「じゃあ、あなたはどんなところに住めは満足するの?」
不満は有り余っていて、満足は満足することを知らない、小さな幸せは妥協という言葉にすり返られて、どこがゴールだかわからないすごろくにダイスを振り続ける毎日。今苦しくてもがんばればゴールに着くと思っていたらきっと途中で倒れてしまう。今ある楽しみを糧にダイスを振る事をはやく覚えくちゃいけないんだなと思いました。